近未来拡張現実エンタメノベル『MIKOTO-The Perfect PROGRAM』

☆握手通信

☆握手通信(1)

「釣れてるー?」
俺は自転車を停め、釣りにいそしむ遠くの二人に声をかけた。草食な感じのにーちゃんが振り向いた。

「はい、調子いいっすよー!」
にーちゃんは釣ったばかりのアジを見せつけた。もう一方のギャルはピッチピチに跳ねるアジから釣り針を外そうとわーぎゃー砂の上で戦時中だ。

俺は俺様号から飛び降り、二人のいる場所まで小走った。クーラーボックスをのぞき込んだら爆釣じゃないっすか。

「イイ感じだねー。これ、どうすんの?」
「観光中なんで、どっかで調理してくれればいいんですけど・・・」
「ああ、サンセットビーチのほうにそういう居酒屋あるよ。教えようか?」
「マジっすか?教えてくれます?」
「オッケー」

俺は携帯を左手に持つ。同じく彼もそうする。
「よろしくー」の言葉と共に、二人は握手した。

何をしてるかっていうと、データの握手通信だ。
デジタル情報は肉体を経由して、相手の携帯に高速転送される。ハンドシェイク通信とも呼ばれている。

そういう時代なので、今はそこらじゅうで握手してる連中を見かけるようになった。
手つなぎ鬼ごっこみたいにサラリーマンが5人手をつないで歩いてたり、駅のホームの日陰でキモオタ同士が手をつないでぼーっとしてたり、結構シュールな光景で見てて面白い。
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