あたしが眠りにつく前に
『これ以上考えるのはよせ』

『気にすることはない。たいしたことはない』

『…本当にそうかな?』

 自分は多重人格なのかと思えるほど、様々な思いがグルグルと渦巻く。数分にも満たない刹那の出来事。でも珠結には異様に長く感じられた。その場面が何度も頭の中でリプレイされる。

 最近の自分は、睡眠時間が増えたことで出歩く機会が減っていた。やはりあれは、足が鈍っていたからに過ぎないだろう。よくよく考えれば、そうだ。平常心を取り戻しつつも、珠結の頭の片隅では嫌な予感が居座っていた。

「あたし、まだ大丈夫だよね。帆高…?」

 その場にいない少年は、答えてくれない。珠結は無意識のうちに、先程書いたばかりの机上の手紙を握り潰していた。
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