あたしが眠りにつく前に
 “あたしのため”と言い張ってきたことが君にとっては“自分のため”として望んだことだったのだから、自分のために願いを叶えてください。

 それと、ごめんね。君の幸せにはあたしの都合も上乗せさせてもらっている。

時よ止まれと、いっそ目覚めている今日を繰り返せたらと毎日のように思っていた。他の人には確実で、あたしには不安定な明日など来なければいいと。

でも明日、明後日、その先の未来が君にとって幸福なものだというのなら。あたしは笑って、時の流れに身を任せていられる。君が幸せなら、そんな希望があるのなら、それでいい。そこに、あたしがいなくたって。

 ねえ、帆高。君が幸せになってくれなきゃ、あたしが困るのよ。

君は応える責任がある。君はいつだって、あたしが喜ぶことをしてきてくれたのだから。

 拝啓、君へ。

 溢れるほどの幸福や、泣きたくなるほどの素敵な出会いが。

あたしが憧れてやまない太陽の光のように降り注いで、君がいつでも笑っていますように。

 一世一代の誓いを引き換えにした、あたしの全てをかけての願いを君に捧げましょう。

後悔も出し惜しみも、する訳が無い。

―――君は、かけがえのない大切な人。親友なのだから。

 チクリと胸に何かが刺さったような痛みが走った。モヤモヤした違和感とジクジクとした不快感が混ざり合って、なぜだか泣きたくなってくる。

この感情の理由を、知ってはいけない。知ってしまえば最後、無かったことになどできない。警告音が鳴っている。

 絵本を胸に抱きかかえ、目を閉じる。脳裏の彼は、こちらに背を向けて肩を震わせていた。あたしには、その涙を拭えない。

 どうか、一人で泣かないで。これからはあたし以外の誰かが君に寄り添って、君の弱さを受け止めてくれるから。

涙は哀しみだけの表現じゃない。どんな涙も分かち合って、一緒に泣いてくれる人が必ず現れる。それはきっと君の絶対であり唯一の、最愛の人。だから信じて、恐れないで。

 あたしの願いも誓いも、否定して。自分の力で叶えたのだと、あの憎たらしい顔で嘲笑って。

心から愛する人と、未来(いま)を生き抜いてみせて。





君が









眠りに









つく前に―――――









End.




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