秘密な基地
魔法の絨毯
何か恥ずかしい
状況で高い所から
落ちたりしたのでしょうか?
この機会に、
少年ノブオに
聞いてしまおうと
思った次第なのです。

「え、背中に
 傷なんか無いよ、
 あるのはこの、
 でこの傷だけだよ、
 この傷でもう危ない事は
 懲り懲りだよ。
 だいたい、
 あのハチに刺されて以来、
 高所恐怖症になっっちゃってね。
 もう一生高い所に
 登らないって決めたし。」

しかし、タケシは
父から、確か同じ時期に
二度も高い所から
落ちて怪我をしたと
聞いていました。
一度目は、ハチに
追われて木から
落ちたおでこの傷、
そして二度目は、
理由を教えてくれない、
あの背中にあった
大きな傷跡の筈…。
これから、この少年
ノブオの人生に起きる
事なのか…。

”しかし、父さんが
高所恐怖症なんてありえない。
現に消防士として、
高いところは
お手の物だったのだから…。”

タケシの頭の中には
疑問が募り、
首を傾げました。

「まあ、これから
 気を付けた方がいいよ。」

タケシは気に
しないようにしました。
映画で観た事を
思い出したのです。
タイムスリップして
過去に来た人が、
ちょっとした事から、
未来を変え混乱を起こす映画を…。
それを考えると、
とやかく、ノブオに
下手な事を吹き込まない方が
良いのだと。
それに、これから三十年、
ノブオの人生に色々あるだろう、
その中に刻み込まれていく
一つの傷、それも
人生の一部なのだから。
そう考えました。
タケシとノブオは、
話し込んでいる内に
すっかり仲良くなり、
意気投合していました。
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