秘密な基地
救世主
タケシは、ゴクリと
唾を飲み込みました。
自分が三十年前に
タイムスリップした
事実がすでに反映
されていたというのか…。
自分が過去に
いたからこそ、
現代の無事な
家族の姿があるのだろうか…。
タケシの頭は
混乱しつつも、
そうしている間にも、
見る見る内に、
炎は広がっていきます。

「くそーっ、
 こうなったら、
 やってやるよーっ。」

タケシは、
燃え盛る炎をくぐり抜け、
燃え朽ち果てようと
している戸板を蹴破り、
家の中に入って行きました。
火の塊やら、
木片やらが
頭上から落ちてきては、
よけるか手で振り払い、
全神経を集中させ、
無我夢中で
廊下を駆け抜け、
階段を上りました。

『ドンドンッ』

「火事だーっ起きてーっ。」

二階に上がり、
まず目に入った
ドアを叩きました。

「な、何だっ、
 どうしたんだっ。」

ゴロウが、
飛び出してきました。

「下が火事ですっ。
 早く逃げないと、
 ここにも火が回ってくるよっ。
 早く逃げてっ。」

タケシの、血相を
変えた表情に、
ゴロウも後ろにいた
カズコも、事の重大さを
すぐに察知し、
一緒に寝ていた
娘二人をそれぞれ
抱きかかえました。

「今なら、まだ階段を
 降りて台所の方から
 出れば、火は逃れられます。
 早く行ってっ。」

「ありがとうタケシ君、
 君も早く出なさい、
 おじさんはノブオを
 起こしに行くから。」
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