【奏】たらればの時間
「それを聞いてどうするんだ?」





「…どうもしないよ?」




今更どうこうするなんて出来ない



でも、向こうでなら…間に合うよね?




「ただ…知りたいだけ」





「ふ~ん」




そう言いながら、ヨウイチは
ビールを飲み干すと追加で注文した



その間がもどかしい…




唐揚げを口に放り込むと
ヨウイチは考えるようにして口を開いた





「あいつは…」





「お待たせしました~!!!」




店員さんが悪い訳じゃないけど恨めしい



手元にあったカシスオレンジを
息を飲むように一口飲んだ




にこやかに爽やかに店員は去っていった




「ははは、タイミング悪っ」




そうやって場を和ますのも上手かったよね




「あいつは独りでいるよ」





その答えを聞いて、どこかでホッとしている自分がいた




もし…誰かが隣にいたなら…





「どうする?

全部聞く気あるか?」




私は意を決して頷いた




「ミサキと別れた後、荒れてたよ」





胸が痛くなった





「あいつと俺、何が違ってたんだろうって…

やっぱ同じ学校じゃないと守ってやれねぇのかなって…」




タクはどこまでも優しかった…


私を大切にしてくれてた…




ヨウイチから聞かされるタクの話




私と別れた後、タクは荒れた


飲みまくる日々に、手軽な付き合い


特定の彼女は作らないのに、関係を重ねてた




「正直ある意味、手がつけれなかった」




思い出しながらも苦渋の表情を浮かべる
ヨウイチに罪悪感が募る




「ごめっ…ごめんなさい」



「あっ、違う違う
別にミサキを責めてねぇよ」



優しくヨウイチは微笑んだ



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