【奏】たらればの時間
走って、走って

向かう先はカズの部屋




インターフォンを鳴らす私に

驚いた表情をしながらも
私を部屋に招き入れてくれた





「ミサキがアポなしで来るなんて

あの日、以来だな」





あの日…階段から落ちた…


不思議な出来事が始まった日





「そうだね」




カズが目の前に温かい飲み物を出してくれた




年上のブラックを好むカズに合わせて

甘党なのに、必死で飲めるようにした
ブラックの珈琲




一口含むと苦さが広がった



今は…この苦さも嫌いじゃない




コートの中から取り出した小さな箱を

テーブルに乗せた




カズの纏う空気が変わるのがわかる



< 26 / 30 >

この作品をシェア

pagetop