【奏】たらればの時間



「…ごめんなさい

これは私には…はめれない」



重い言葉を発した




「っ…何で?

そりゃ信じられない事ばっかしてきたけど
今回は本気なんだ

信じてくれよ」



ギュッとカズに抱きしめられる




あぁしてたら


こうしてれば



そう思った回数なんて数え切れない程




でも、カズと過ごした時間も数え切れない




いつもこの温もりに包まれてた




嫌な事もあった




でも、幸せを感じる瞬間もあった




「そうじゃない…そうじゃないの


カズの事、信じられないとかじゃなくて
私の問題なの


ずっと私は
幸せにして貰う事ばかり考えてた」





「そりゃ今まで幸せに出来てなかったさ


だけど…これからは間違いなく
幸せにするから!!!」





「ありがとう…でも、それじゃダメなんだ」



カズの抱きしめる力が強くなるのがわかる



でも、私の手は床にくっついたまま…




「何が…ダメなんだよ…」



抱きしめる力とは裏腹に
弱くなってく口調に胸が痛い




「私が…幸せにしてあげられない」



「そんな事ねぇよ

俺はミサキが傍にいてくれるだけで幸せだ」



「それじゃ駄目なの…

そうやって私は甘えて流されてるだけ

そんな自分が嫌なの

勝手だってわかってるけど…自分でちゃんと歩みたい」




「わかんねぇ…わかりたくねぇよ」



「カズに頼って、甘えて
自分で歩まない日々を終わりにしたい

自分、独りで歩みたいんだ…」



「意味…わかんねぇよ」



そう言いながらも

ゆっくりとカズの温もりが離れ

お互い無言のまま見つめ合った




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