あまーいお時間
『うん!じゃあ‥あの
本屋さんの前で
待ってるねっ』

『りょーかい』

私は急いで携帯だけを持ち
自転車に乗った。

自分でも分かるくらい
いつもとは違うスピード。

早く会いたい。会いたい。
そればっかりが頭の中を
支配していく。

いつもなら10分かかる道。
でも今日はとても早く
感じた。


「っ‥はぁ‥」

上がった息を整え、
辺りを見渡す。
けど彼の姿はない。

―あれから何分
経ったのか。
携帯を見ると、20分以上
経っていることがわかる。

なにかあったのか。
良からぬことが
脳裏を過ぎる。

彼に電話をしてみるも
機械音が流れるだけ。

どうしよう。どうしたら
いいのか‥。

不安に押し潰され
涙が出そうになった。
その時―――


「ごめ‥っ
遅くなったっ‥」

急に緊張感や不安感が
なくなり、力がぬけ
涙とともに腰を落とした。

「ほんと、ごめんっ
大丈夫?‥ってか
また泣いてる~」

「だっ‥て
事故とかに‥遭ったのかとか
いっぱいいっぱい‥っ
変なことばっか
考えちゃ‥って‥」

「そかそか、心配‥
してくれてたんだね。
ごめんね?でも大丈夫。
凜を一人になんて
しないから‥」

私はその瞬間、温かく
ふわっと彼の匂いに
包まれた。

耳元で彼の息遣いが
聞こえ、頭の奥まで
響いてくる。

「だから‥余計な心配は
すんなよ? それに‥
人前で泣くなよ~
他の男が見たら、俺
やだもん」

彼は耳元でそう言いながら
腕の力を少し強める。

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