恋の唄
未練がどうこうではないのは話を聞いたから分かる。
リストカットをする一花さんと別れるという事は、とても勇気のいる事だ。
どんな風にするのがいいのかなんて、誰だってすぐに思いつくものではないと思う。
自分勝手に別れないのは、華原君がちゃんと一花さんを思いやっている証拠だ。
優しい華原君。
そんな彼の苦しみに気付かずに……ううん、気付こうともしないで、私は華原君を拒絶したんだね。
「華原君……ごめんね」
「何で結衣が謝るんだよ」
「うん……でも、ごめん」
辛い時には隣りにいようとあの日決めたのに。
「俺は結衣からそんな言葉を聞きたいんじゃねーし」
「え?」
「聞きたいのは、本当の気持ち」
言われて、ドクンと心臓が強く脈打った。
今、伝えてもいいのだろうか。
ずっと伝えたかった気持ちを、華原君に届けてもいいの?