恋の唄


夕焼け、二人の影がアスファルトに伸びる。

私を家の前まで送ってくれた華原君は、到着と同時に「結衣」と私の名を呼んだ。


「なぁに?」


横に立つ華原君を見ようと体ごと向けようとした刹那──


体を強く包み込む感触。

時々華原君からほのかに香っていた香りが、今はいつもよりハッキリと感じられて……


「俺、お前の隣りになれて良かった」


声の近さに、抱き締められてるのだと認識した。



< 136 / 204 >

この作品をシェア

pagetop