恋の唄


『結衣ちゃんって可愛いね』

『えっ……ああ、そうか? てか、何だよ急に』


祐一郎が浮かべたのは困ったような笑み。

あの笑みだった。


『その笑い方、嫌い』

『……一花?』

『わたしのせいなら仕方ないと思ってたけど、違うってわかったの』

『何言って──』

『結衣ちゃんのコト考えてる。だからそんな風に笑うんでしょ!』


いつものように感情的に言って、私は後悔したの。

けど期待もしてた。

願っていたと言ってもいいかもしれない。

祐一郎が否定して、また安心させてくれると。

でも……


『……』


ただ、祐一郎は黙るだけだった。

苦しそうな、切なそうな表情で。



< 150 / 204 >

この作品をシェア

pagetop