恋の唄


いつもいつも思っていた感情。

密かな願い。

それを口にすれば、一花さんは小さな声で言った。


「……私も、祐一郎が好き。別れたくないの」


当然の言葉だ。
ここで「それじゃあよろしくね」なんて身を引くのはドラマくらい。

現実はそんなに甘くない。
都合良く事は運ばないのだから。

それでも少しがっかりしてしまった私の心に、なんて嫌な女なんだろうという黒い感情を湧き上らせる。

恋した者のみが知る、醜い自分。

そして、その醜さゆえに強くなった自分が私の唇を動かし、音にした。


「気持ちは負けてないつもり、です」


言われると思ってなかったのか、一花さんは驚いた表情を私に向ける。



< 158 / 204 >

この作品をシェア

pagetop