恋の唄
「あのっ!」
呼び止めた私を、足を止めてくれた一花さんが不思議そうに見る。
「なに?」
「ちょ、ちょっと待っててください」
伝えて、私は急いでカバンからノートを取り出した。
何も書かれていないページを開いて少し破る。
ペンを走らせ、電話番号を書いたその紙を一花さんに差し出せば、一花さんは数回瞬きをして瞳で確認してくる。
「私の番号なんだけど、良かったら」
「……どうして?」
当然の質問に、私はゆっくりと伝えた。
「私も、一花さんを知りたいから。それに、もし私に文句が言いたくなったら便利だと思うし……」