恋の唄
「……海」
「なんだ」
「俺、結衣と話したい」
伝えたい言葉がある。
聞かせて欲しい言葉がある。
家の外に出た俺は思ったままを告げた。
海は何も言わずに少し悲しそうな表情で俺を見て……ふと、その瞳が俺から別の場所に移った。
「……古賀」
海が紡いだ名前と視線を辿れば、そこには確かに古賀の姿があって。
古賀は庭の隅で僅かに笑みを浮かべながら手招きをする。
俺と海は顔を見合わせてから古賀の元へと歩みを進めた。