恋の唄


ルンルン気分でバス停に向かう私。

いい買い物が出来たなぁなんて思いながら歩いていると、突如背後から声を掛けられた。


「おねーさん一人ぃ~?」


ナンパだと思ってシカトして速度を速める。

と、「わっ、待て待て! 結衣、俺だって!」と名前を呼ばれて振り向いた。

そこにいたのは華原君。
ナンパだと思った時はなんの反応もしなかった心臓が、突然バクバクと騒がしくなる。


「か、華原君!」

「そうか、結衣はシカトするタイプか」

「ごっ、ごめん。気付かなくて……」

「やー、いいんじゃね? 彼氏はその方が安心だろ」


言って、彼はハハッと笑った。


「彼氏なんていないよ」

「あ、初耳。いんのかと思ってた」

「何で?」

「んー…なんとなく一線引いてる感じがすっから」


それは多分、華原君との事を言ってるんだろう。

だけど最初は苦手だったから、とか、今は意識してるから、なんて事は言えない。





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