恋の唄
「そんな事ないよ」
これが私の精一杯の返答だ。
「そっか? おっ、結衣、それ可愛いじゃん」
華原君が私の鎖骨辺りに目をやって言った。
彼が指すのは買ったばかりのネックレス。
「なんかお前っぽい。似合うな」
言われて、私は伊織ちゃんに心の中で感謝した。
華原君に似合うと言われた。
それだけでこのネックレスを毎日つけようかなんて思ってしまうくらい嬉しい。
「さっき、気に入って買ったの」
「へー。あ、じゃあ記念に残そうぜ、それ」
「え? 残すって──」
「いーから、ほら、行こうぜ」
テニスバッグを肩にかけて、彼は一人でズンズンと歩いていく。
私は急いでその後を追った。