恋の唄


昇降口を出た時には、もう陽は大分傾いていて部活を終えた生徒達がパラパラと帰宅するのが見える。

その光景に私は華原君を思い出した。

彼はテニス部。
もしかしら偶然出会えるかもしれない、と。

でも、出会ったところで何かあるとも思えない。

彼は真柴君や他の部員と一緒に帰るのだろうし……


「結衣!」


歩きながら悶々と考えていた私に背後から声がかかる。

私を呼んだその声は、つい今しがたまで頭の中に、心の中にいた彼のもの。

忙しなく動き始めた鼓動に釣られるように私は振り向いた。


視線の先には紛れもない華原君の姿。

予想通り、彼と一緒に真柴君もいた。


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