恋の唄
思わずギュッと拳を作ってしまうと、伊織ちゃんが立ち上がる。
「私、ジュース買ってくるね」
私が返事をする前に伊織ちゃんは席を離れてしまう。
気を……使ってくれたんだと分かった。
また華原君の声が聞こえる。
「結衣、一花は──」
「ダメだよ」
私が華原君の声を遮ると、彼は私を見た。
「今は試合の事だけ考えないと」
「結衣……」
「頑張ってね。ここで応援してるから」
今出来る精一杯の笑顔を作って華原君に向けた。