Chain〜切れない鎖〜
綾と別れて家に向かう。


いつの間にか辺りは暗くなっていて、あたしの髪を春の風が優しく撫でた。




明日から高校三年生。
あの辛くて嫌な中学を卒業して二年。

何も進展のない毎日だけど、それでいい。
地味だけど楽しい毎日。
三年生になっても、楽しめるといいな。






玄関のドアを開けた。
暗がりの中に、温かい光がそっと漏れる。

「芽衣。おかえり」

そして、いつものように優しいお母さんが迎えてくれる。



当たり前の光景。

だから、あたしにはこれがどんなに幸せなことなのか、分かっていなかった。

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