Chain〜切れない鎖〜
「帰るぞ」

いつものようにあたしを呼ぶ一馬。
幸せいっぱいに、一馬の背中を追った。




今日から夏休み。
一馬と過ごす、初めての夏休み。
もちろん受験勉強も学園祭の準備もしないといけないが、今しかないこの時間を楽しみたかった。



晴れ渡る青空の下、二人で校舎の外へ飛び出した。

一馬と一緒に海に行きたいし、勉強だってする。
一馬の自転車の後ろに乗って、笑いながら坂を駈け下りたい。





そんなあたしの幸せな考えは、聞いたことのない女の声で打ち消された。

それは甘くて艶っぽい、女性の声だった。

< 142 / 306 >

この作品をシェア

pagetop