Chain〜切れない鎖〜
「もう一回言ってみろ」

「一馬君?」

遠くで一馬と女の声が聞こえる。

「お前が女でも、俺は容赦しねぇ」

「一馬君!?」


涙で視界が滲む。
二人がどんな顔で向き合っているかなんて見えなかった。

ただただ辛くて、悲しくて、あたしは駆け出していた。

色んな思いがごちゃごちゃ渦巻いて、どうしようも出来なかった。







その晩、寝ることも出来ずにひたすら泣いた。
涙が渇れるかと思うくらい、次から次へと溢れてきた。

一馬は遊びだったんだという思い。
一馬が他の女を抱いたという現実。
もしかしたら今もあの女といるかもしれないという恐怖。
全てがあたしを酷く痛めつけられた。



せっかく好きになったのに。
せっかく人を信じることが出来たのに。
なのにあたしは裏切られる。



「一馬…行かないで」

こんな状況なのに、必死で一馬にすがろうと祈るあたしがいた。

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