Chain〜切れない鎖〜
「芽衣…桜井君はね…」




ガラッ






タイミングが悪いとはこういうこと。

急に開いた教室の扉の向こうには、いつものように真面目に制服を着こなした一馬がいた。

見慣れた焦げ茶の髪。
少しパーマがかった清潔な髪型。
写真とは、似ても似つかぬ姿だ。


「…一馬」

「忘れ物」

そう言って一馬は、机から問題集の束を取り出した。

普通の仕草。
だけどあたしは見てしまった。
ほんの一瞬だけ、刺すような目付きで華を睨んだこと。

それはあいつらよりもずっと恐ろしく、背筋に鳥肌が走るようだった。
感情が少しもない視線。
もしあるとしたら、憎しみと怒りだけだろう。


その視線に反応し、華がびくっと身体を震わす。
いつもは血の気のいいその頬が、土色に変わっていた。
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