鏡の中のアタシ。
清純派なアタシ。

「俺そぉやって、里菜チャンが、困って笑うその顔超好きっ!!」
満面の笑みを浮かべて、正面に座る女の子に話し掛けるこの男、雄也。
雄也は、たぶん世間ではかっこいい方なんだろう。

上手に毛先を遊ばせてつくった今どきの髪型に、切れ長の色素の薄い目。

本人だって、そこそこかっこいい事を自覚している。

「えーっ、やめてよっ!そぉゆう事いうのぉ…」

変わって雄也の正面に座り、そぉ言って恥ずかしそうにうつむいた女の子、里菜。
まっすぐにのばされたさらさらな栗毛のストレートヘアは、今日のために用意されたものだ。
ほんのり色を付けただけのメイク、清純派な膝丈のスカート…すべて用意されたもの。

「…雄也クン、今日は楽しかったです。また電話ください☆」

里菜は、そう軽く首を傾げながら微笑むと、まだ何か言い掛けようとしていた雄也を置いて、足早に席を立つと、最後にもう一度振り向いて、満面の笑顔をつくり店をあとにした。

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