地味なあたしと不良軍団
奏は何も言わなかった。
泣きそうな恵美の腕を引いて、部屋を出ていく。
秋と薫も、依奈を気にしながら部屋をでていった。
ばたん、
静かにしまった扉をみたとたん、涙が溢れてくる。
「うっ…、うぅ」
止めようとしても止まらないのだ。
大地は無表情でそれを見つめ、そして指で涙を拭った。
「依奈ちゃん」
消えるような声。
危うく聞きのがす所だった。
「ごめん」
*
「奏ちゃん」
「…」
「奏。」
「…」
「幾多奏!!」
「あ、え、なに。」
フルネームで呼ばれて、やっと反応した彼に薫はため息をついた。
「はっきり言うわ。…殴っていい?」
「はあ?」
薫は秋に悠真を渡す。
そして思い切り頬を殴り付けた。
「っ!!」
「薫っ!」
恵美が驚いたような声をあげる。
すべてが気にくわない。
それは秋も同じだったようだ。