†幻獣国物語り†金崋編
∫運命の出会い∫
「初めまして、金ヶ崎(かながさき)春崋(しゅんか)といいます
 これから、よろしく」

 初めての学校(本当は学園なんだけど)。初めての教室。初めてのクラスメートに先生。
 わたしは笑顔で挨拶をした。

 真新しい制服に身を包み、新しずくしで知らず知らずのうちに心が踊……っちゃダメよ!わたし達は遊びにきてるんじゃない。調査しにきてるのよ!!

 わたしとした事が、本来の理由を忘れて浮かれてしまったわ。
 いきなり忘れかけちゃったけど、その動揺を表に出す事なく、笑顔を顔に張りつける事に成功。

 そこで、もう一回わたし達の目的を再確認しましょう。
 今、わたし達は『L・S学園』に潜入している。
 十ヵ月遅く生まれてきた弟の冬喩(とうゆ)は『高等部一年春組』のクラスに。
 わたしは『高等部一年夏組』のクラスに転入してきた。
 それというのも、恩人でわたし達の保護者である伯父さんの頼みで、ある事を調査するために…。


「…という訳です。
 ここで、ちょっとだけ質問コーナーにしましょうか。金ヶ崎さんに質問のある人は?」

 わたしの後を引き継いで、『夏組』の担任の女教師、倉田(くらた)先生が笑顔で言った。

「はいはーい。金ヶ崎さんって髪染めてんのー?」

 早速手を上げ、先生の返事を聞く前にいかにもお調子者そうな男子が、わたしに質問してきた。

「これは生れ付きよ。母が外人だから」

 前のところでも、わたし達の髪や目の事を言われてたから、わたしは自然と言葉が出た。

「はい、他に質問は…って、もう時間がありませんね。それでは金ヶ崎さん。席につきましょうか。席は一番後ろの窓側から二番目よ」

 先生はにこやかにわたしの席を指差す。
 廊下側の隣には女の子が。前の席には男の子が座っていた。
 不思議な事に窓側の隣と、斜めの席には誰もいない。
 休みなのかな?

「はい」

 わたしは先生に教えられた席を確認したら、返事をして歩きだした。

 まずは、潜入成功かな。

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