アズライト



「うあ なんだ淳!その顔!」


「あ!岡田先輩きたー!」



北国の冷たい外気が
負けずと暖かい店内に流れ込もうとして
急いでドアを閉める


俺の頬を指差し
ゲラゲラ笑いながら振り向いた奴らは
高校時代からの知り合いだ


今夜は大学アイスホッケー部の打ち上げを兼ねた飲み会

酒には強い、北の國の連中
アルコールからとはまた違う
上気した顔で笑っている


「淳先輩いれば
今日絶対勝てたのに〜。
何で高校でやめちゃったんですか〜?」

差し出されたビールに「車だから」と手を添え
俺はニヤッと笑って答える


「女。」

「も〜!いつか刺されますよ〜」
隣り合わせの女が笑いながら
何かにつけて体にさわって来る



−誰だっけな
西川が連れて来た女かな
…じゃあ手を出すのはやめかな


「淳、もしかしてバレたのかそれ」


「あ? おお 春と切れた
薄々わかってたみたいよ
西、塩とって」


「泣いてたろう…
お前にしては長く持ったし」


「元々こういう奴って
わかってたんだから、仕方ねえべ」


焼鳥をほおばった所で携帯が鳴った


「何?
わかった 少し飲んだら行くわ」


「新しい女?」

「うん アキ」

「?!おま…!
アキって春ちゃんの姉貴?!」

「そそ」

「そそって
そりゃヒデえよ淳!!」

「行くわ またね」


お疲れ様と声がかかる中会計を済ます

「あそこの全員分まとめて」


「いいよ淳!」

慌てて追い掛けて来た腕が袖をつかんだ


持って来た会計表を
俺より背の高い西川に取り上げられそうになったが
ひょいと回ってそれを阻んだ


「今日応援行けなかったし
させて」


「…オマエまじでヤバイって!
あれだけ女とヤッてて…
本気で付き合った事ないってのは」


「一緒してる最中は
大切にしてるつもりだよ」


ダウンを首までしめてドアを開ける


瞬間の隙間から
なんとも言えない表情で見送る
親友の顔が見えた


−なんか思い出したな
ああ  実家のジョンか






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