アズライト





それは初見の俺にもわかった


『このキャラは
     きっと強い』


アニメ色のキャラが溢れる中
独りだけ風景に溶ける水彩画の騎士

ゆるいウェーブの金髪を揺らし
彼女は現れた



画面内を駆けていく人々
様々な装備に似た物はないし
ユウもその中では上位らしいが
この人には敵わない気がする


燻し銀の甲冑に長身の彼女は
ユウに手をふり去って
すれ違い様、髪が風に揺れ
まるで俺を一瞥するかの様に
碧の視線を残し、画面から消える



「――優…今の誰?」

「ああ!
兄ちゃんもなんか違うのわかった?

彼女は俺達の国のリーダー格
優しいし強いし頼りになるんだ!
さっきの敵もこの人なら
ソロで倒せるし…

すごいレア装備で全身固めてる

まあ俺は後衛だから
かなりLevelあがってもきついけどね」

尊敬と羨望を含んだ優の声



「…どれ位やればこの人と同じ位なれる?」


そんな言葉が口を突き、自分でも驚いた


「な!最初から目標高すぎ!
…でもこの人プレイ時間も準廃人位で
一日中オンなわけじゃないんだよね〜

…てかね、兄ちゃん」

「ん? 」


「あの人、中身人間じゃないんじゃ
って言われてるんだ…」


俺はコーヒーを噴き出した


腹を抱える俺に
まだ優は追い撃ちをかけてくる

「笑うなって!
だってレアモンスターが現れる場所に
的確に現れるし、レアが落ちる確率が
ラッキー過ぎるんだよ

道覚えるのも早いし、第一、彼女のリアル
誰も知らないんだぜ?


普通は少し位話すし実際仲良くなって
オフ会で遊んでる奴らもいるのに」


「だーかーらー
…これゲームでしょ?
割り切ってやってる人なんだろ
時間が限られてるなら
効率良く動こうと思うし
俺もきっとそうする」


優がまだ
「あれはネット意識かもしれない」とか
とんでも説を熱く語っているのを尻目に
少しぼんやり考えてみる


別に優がひとり引きこもった所で
家は経済的に困らないのだ



…ただ、ちょっと感覚が
おかしくなって来てるのは問題だな





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