アズライト




夜になって、金曜ロードショーを見る


ボリュームを少しあげたかったが
人んちだしあまり触るのも悪いかな


実家からの帰りに買い物した袋の中から
まだフィルムに包まれたままの
分厚い本を取り出す


「何見てるの? 淳」


風呂からあがって来たミチルが
ベットに俯せになり
本を読んでいた俺のタバコの灰を
灰皿の上にポポンとやって口にまた戻してくれた


「ありがと
知り合いがゲームやってて
俺も誘われた
だから本買ってきたんだけど」

布団に潜り込んで来たミチルが
それを取り上げて読み出す

「あれ…見覚えあるかもこの絵
うちの兄貴やってた事あるよ むかーしね」


「あの人がオタクっぽい趣味あるって意外だな」


「兄貴、漁師でしょう
朝早いから飲みに行くにもね

ネットって一日中人がいるから
それで始めたみたいよ
まだP.S.2だった頃かな」


「なる 今5だっけか」


「うん …それよりよかったの?
私高校の時から
淳の大ファンだから嬉しいけど
今 彼女いるんでしょ? 」


「Hはしてるけど付き合ってないよ
俺告ってないし」

「またその台詞!」


ミチルは笑いながら抱きついて来る

なあなあの流れに身を任せてみるけど
何となく、のらない


…こういうのも飽きて来たな






真夜中
白い息を吐いて自宅につくと
玄関前にアキが立っていた


俺の気配に気がつき
真っ赤な鼻が、切羽詰まった笑いを見せる



「…何してるの アキ」


体の前で手を組んだままの彼女に
それだけ言葉を投げた

「だ だって淳帰って来ないから」


「約束してないよね」

「…してないけど、でも
一日連絡くれなかったし」


「今タクシー呼ぶから
あんまりこういう事するな」




急いで持ち出した上着をアキにかけ
包む形でボタンをとめていった


アキの顔から笑い涙


「ほんと…
冷たいのか優しいのかわかんないわ…

付き合うと地獄だよ…って
春が言ってた意味わかった」




…地獄はないべ




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