地下
「そうですね」


再び二人は手を重ねた。


紗絵子に手を引き上げられ、愛華は立ち上がる。


「それにしても」


と、紗絵子。



「あそこまで卑怯な奴とは思わなかったわ、男のくせに女二人を置いて逃げるなんて」


「そうだ、徹先生は」


紗絵子の言葉で思い出したように、周りを見渡す。


けれども、徹の姿は見当たらない。


「彼なんかほっといて、出口探しましょ」


愛華は少し躊躇ったが、紗絵子に促され足を進めた。


暗闇を懐中電灯ひとつ頼りにして。
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