君はここにいた。


「―― 俺、そろそろ戻らなきゃ」


 いつまでも、槝木と話していられない。
 大倉たちも待たせているし。

 そう言って、足早にその場を離れようとした。


「浅葱!」


 槝木が呼び止める。


「アツには、俺がここにいること言うなよ」


 なんでだろう。
 
 俺が少し首をかしげると、槝木はすぐに付け足すように言った。


「アイツに絡まれると面倒だからな」


 それは言えてる。
 思わず笑ってしまった。


 目の前の槝木も笑っていた。



  


 
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