桃太郎【Gulen】


「久しぶりじゃのぉ、桃太郎。」


 長い長い廊下を歩き、人街ほど歩いたのではないかと思われたときに、たどり着いたのは、輝夜姫の待つ玉座。


 床板だけが貼ってある、質素なだけの大和王宮と比べると、その差は歴然だ。


 一面に唐からの高級品である『畳』が敷き詰められ、一段高くなっている姫の玉座には白い絹の仕切りが惹かれている。


 姫の姿も、麻の着物と赤い武家装束を身にまとっている、タケルや金時とは比べ物にならないほどに、豪華絢爛だ。


 絹の着物事態、特別な儀式しか見ないというのに、それを何重にも身にまとい、さらにその着物一つ一つが綺麗に色づけされており、刺繍までされているのだ。


 十二単など・・・初めて見るが、何ゆえこのような豪華なだけで、動きにくい格好をするのか、理解に苦しむ。


 腰まで伸びでいる、艶のある漆黒の髪も、農作業や狩りを一切せずに屋敷に篭り続けている証だろう。


 男たちに働かせるだけ、働かし、自分は一歩も動かず王座につくなど・・・


 まさに影で『愚帝』と言われているだけのことはあるな。


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