桃太郎【Gulen】


「あぁ、久しぶりだ。今は桃太郎ではなくヤマトタケルと名乗っている。」


 姫を前にとりあえず胡坐をかく。


 それにしても、この畳という床・・・いやに柔らかく、気持ち悪い。


 こんな場所で、よく生活できるものだ。


 金太郎は、居心地が悪いのか、タケルの隣で足元を見ながら、落ち着かない様子で立ち構えている。


 足を広げ、腕を組んでいる姿はどう見ても、相手に敬意を表す格好ではないことは言うまでもないだろう。


 しかし姫の周りにいる男たちは、桃太郎と金太郎の尊大な態度に対して、小言の一つももらそうとしない。


 まったく、コレが俺たちと同じ男だと思うと、言葉もないぞ。


「フフッどちらでも、同じことよ。それにしても客とはいえ、屋敷の主を前にして頭の一つも垂れぬとは、その尊大さ、誰に似たことやら。」


 おそらく、父だろうよ。


「客を前にして、素顔をさらさぬ者に言われたくないな。」


 絹の仕切りで顔をぼかすな、輝夜姫・・・それほどまでに、己が素顔をさらすのが恐ろしいか。


 げに恐ろしい、女の郷を持つ愚帝よのう。


「相変わらずの減らず口よ・・・して、何用かの?」


 輝夜姫の眼光がひかったのが、ここからでも分かった。


「まるで、妖怪だな・・・。」


 金太郎・・・思っても、口にするな。


 俺も、まったく同意だが・・・。


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