さよならさえも言えなくて
そして、半年が経った。

巧海のことは今だって好き。
というか、あの時よりあたしの“好き”は大きくなってる。

だけど、あの時思い描いていた様なものとは少し違っていて、“付き合う”という事は、幸せな事でもあるけれど、辛い事でもあったんだ。



それまで話した事もなかったのにいきなり付き合っても、やっぱりどこかぎこちなくて、恋人と言うよりは、友達の様な感じだった。

初めはそれでも良かった。
今までは隣を歩く事さえも出来なかったあたしにとっては、それだけでドキドキしたし、幸せを感じられた。

それに、時が経てばきっと本当の恋人になれる、そう思っていた。




だけど、半年経った今もあの頃と何も変わってなくて、変わった事は、あの時感じた幸せが、不安になっているという事。


デートは4回した。
その内3回はあたしから誘った。
消極的なあたしにとって、巧海をデートに誘う事は凄く勇気の必要な事で、凄く緊張した。
1回だけ巧海から言って来てくれた時は、飛び上がる程嬉しかった。


でも、デートと言ってもいつも同じで、キスは勿論、手を繋いだりとか“好き”って言ってくれるなんていうのは無くて、ただ話をして、笑って、隣を歩くだけ。


自分から行動出来ないあたしもいけないと思う。
だけど、巧海はこれでいいと思っているのだろうか。
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