Memory's Piece

薄暗い裏道を歩きながら、ボクは尻尾を振った。

降り慣れた猫尻尾になっているのは、波狼と別れてから着替えたからだ。

履き慣れたブーツをカツカツ鳴らしながら歩くのは慣れない初めての場所。

迷いなく歩けるのは道の先に確実に目的のモノがあると分かっているからだ。


「レーイチー。いるかーい」


「バカネコ!レイだって言ってるでしょ!」


メガホンがわりに両手を口元に当てて呼び掛けると、聞き慣れた返事が帰ってくる。

薄暗い裏道を抜け、開けた場所に出たボクは地面から突き出た何だかよく分からないオブジェに腰掛ける人物にニッコリと笑いかけた。


「久しぶり、レーイチ。」


「はいはい。」


おざなりに手を振ってくる彼女の名前は如月 零一。

鮮やかなオレンジ色の服で身を包んでいる彼女は生物学上、男という生き物に分類されている。

心は乙女よ♪とかいつもほざいている彼女と言うべきか彼は年齢、性別共に不詳。いや。むしろ「零一」という性別なのかもしれない。


「ミケちゃんがアタシのトコにくるなんて珍しいわね。」


「まーね。」


零一の横に腰掛けると、不思議そうにそう言われてしまった。

なぜ零一を探してまで来たかって聞かれると、理由はただひとつ。

全てを知っている何も言わない第三者のところに行きたかったっていうだけ。

これは甘えだ。

しかも本人には絶対言いたくない。


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