Memory's Piece
自覚してないだけで、実は相当弱っているのかもしれない。
昔からの幼なじみは、膝を抱えて黙り込むボクに何を言うでもなく、静かに歌を口ずさんでいる。
聞き慣れた優しい子守唄。
「まだ覚えてたんだ・・・・それ」
「当たり前でしょー。」
苦く笑うボクに零一はプリプリと頬を膨らませて人差し指を振ってから、ふいに真剣な表情を浮かべてボクの頬を包み込んだ。
大きな手は温かくて優しい。
ただ独りのボクの罪を知る存在。
それはこんなにも優しく暖かい。
「夕妃ちゃんに会ったらしいわね」
「まーね。」
「アンタ、どうするの?」
昔なら即答できた質問をボクは舌の上で転がした。
『どうするか』
なんてことは自分でも実は分かっていない。
いや、分かっているけど決めかねているのだ。
桃亜姉と話たり波狼とじゃれあったり、頼兎と出会ったりするウチに、やりたいことがいっぱい生まれてしまったから。
もっと笑ったりはしゃいだり泣いたり怒ったりしたい。
心の奥底からそう思うようになってしまった。
「殺るよ。ボクの罪だ。」
だからこそ、ボクはもう戻れない。
ボクは汚れた最低な存在。
罪を明かせばきっと頼兎も波狼もいなくなってしまうような事をやらかした最悪な人間。
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