Memory's Piece
「波狼さん!!」
余裕かまして戦闘を繰り広げていたボクは突然聞こえた頼兎の声と、風の中に広がった嗅ぎ覚えのある香りにピクンッと体を止めた。
戦闘に集中するとボクは周りが見えなくなるから、その光景はいきなり視界に入ってきたと言っていい。
雑魚で遊ぶのに集中しすぎて、周りが見え無くなって気付けば波狼が血だらけ。
だれか説明して。
なんで波狼のお腹に風穴があいてるの。
なんで波狼のお腹から剣が生えてるの。
全てを真っ黒に染め上げる程の衝撃がボクの体を硬直させる。
なにが起こったのか理解出来なくて、頭が真っ白になる。
「油断したな、妖猫!!」
誇らしげに声をあげる雑魚が、波狼から強引に刃を抜く。
広がる血臭。
止まることなく流れ出す紅い液体。
「・・はろ・・・・・?」
思わず口をついて零れた小さな呟きに、紅く染まった口元をこちらに向けて波狼はパクパクと動かしてみせた。
『大丈夫だ』
安心させるような柔らかな視線。
優しく微笑む血に染まった口許。
声無き声にボクの毛がザアッと逆立った。
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