Limiter
そんな事を心の中で思いつつ、私はハヤトと会話を続けていた。


「俺、褒められるより、叱られた方が伸びるんです」

タイミング良く、ハヤトが話題を振ってきた。

「へ~そうなんだ」
私はニッコリとほほ笑む。

「じゃあまず足組むのを止めようか?」
笑顔でそう言った私を見て、ハヤトは慌てて足を元に戻し背筋を伸ばした。

その様子を横目で見ながら、
お気に入りのピンキー&ダイアンのシガレットケースから、
私はタバコを一本取り出した。

姿勢を改めたハヤトがすっとライターを差し出し火を着ける。
私はゆっくりと煙を吐き出しながら言った。

「別に、足組みたかった組んでも良いんだよ? ただ前の担当がやたらと姿勢の良い人だったから、なんかそういうの気になっちゃうんだよね」

「前の」担当と言ったが、この時点ではまだその担当との関係は切れていない。
3週間前にその担当の店に行ったのが最後だ。
そしてハヤトに出会ってから、その担当に対する興味がまるで無くなっていた。
だから私の中ではもうすでに「前の」担当という存在に降格していたのだ。



その後もハヤトは挙動不審ながらも一生懸命に場を盛り上げようと、つとめて明るいキャラを振りまいていた。
見ていて「頑張っている感」がひしひしと伝わってくる様子に、
私は「可愛いなぁ」と思った。
これが母性本能をくすぐられるというやつだろうか。

今まで24年間の人生の中で、年下に惹かれたのは初めてだ。
この歳になると、年下も許容範囲に入ってくるんだなぁと、しみじみと思った。


そうこうしているうちに初回の2時間が経ち、友達の元に内勤が延長の確認をしにきた。
友達はこのときかなり酔っていたようで、「COLORS」に来てからまったくお酒が進んでいない。
もちろん彼女は延長することなくチェックした。
私もついでなので彼女と一緒にチェックを出した。
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