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「…はなせよ。馴れ馴れしく触んな」
今まで嬉しそうに笑ってた将真くんが
険しい顔をして、平塚くんをにらんでいる。
「…馴れ馴れしい?…よくそんなこと言えるよねー。転校してきた初日から、『実樹』なんて呼び捨てにしちゃってさ。木下が嫌がってんのわかんないの?…馴れ馴れしいのは自分だろ?」
馬鹿にしたような呼び方で
平塚くんが将真くんに言った。
……将真くん…?
こんな顔、初めて見た。
…どうして、そんなに怒ってるの…?
…私、嫌じゃないよ…?
「……実樹、俺に呼び捨てにされんの嫌…?」
将真くんの表情が突然悲しそうな顔に変わった。
…そんな顔…しないで…
さっきから、みんなの視線が
私たちに釘付けになってる。
「…っ…そんなことっ」
『そんなことあるわけない』
言いたいけど、そんなの私じゃない。
恥ずかしい。
昨日まで、あんなに嫌そうにしてたのに
今さら、名前で呼んでほしいって思ってる
なんて…言えないよっ