―White Memory―
灯吾は
すごく優しい人だった。
そして、とても穏やかな人だった。
あたしが怒っていても
顔色ひとつ変えず、感情を剥き出しにして声を張り上げるあたしの言葉を、ただ黙って聞いて。
自分は悪くないのに
「ごめんね」と言って、どうしようもないあたしを受け入れてくれる。
そんな人だった。
あたしが望めば、何時でも駆け付けてくれたし
いつだって灯吾はあたしを一番に考えてくれていた。
なのに、何であたしは――。
ぽたり、と便箋に涙が落ちて文字を滲ませる。
一粒、二粒、三粒…。
落ちる涙を拭うことも出来ず、あたしは手紙を胸に抱きしめた。
「…灯吾…っ、」
――灯吾。
弱くてごめんね。
こんなあたしで、ごめんね。
でも、好きだから。
本当に本当に
灯吾が大好きだったから。
記憶を失ってしまったあなたを、受け止めることが出来なかったの。
本当は、誰よりも
あなたの傍に居なきゃいけなかったのに。
そう、あの日に
誓ったはずだったのに――。