―White Memory―
「…なん、で?」
渇いた声が漏れた。
封筒を持つ手が震えてる。
無理もないだろう。
封筒に書かれた名前、それは。
“堀口 灯吾”
さよならを決めた、愛しい人だったんだから。
胸が騒ぎ出す。
封筒に押された消印は
今日から一週間以上も前。
咄嗟にハサミを手に取った。
尚も震える手を動かし、やっとの思いで封を開ける。
コトン、とテーブルに置いたハサミの音が、やけに大きく部屋に響き渡った。
ドクンドクンと速まる鼓動。
見えない何かに背中を押されるよう、綺麗に折り畳まれた便箋を、ゆっくりと開いてゆく。
“聖華さんへ”
その文字を見た瞬間、ぎゅっと目をつぶって便箋を胸に押し当てた。
怖い…。
見るのが、怖くて仕方ない。
何が書いてあるんだろう。
灯吾は、あたしに何を伝えたいの?
考えてみても
答えは出なかった。
でも、ただひとつ確かなこと。
灯吾は、あたしに何かを伝えようとしてる。
それだけだった。