―White Memory―
行ったり来たり。
今のあたしは、すごく不安定で。
灯吾の言葉ひとつで
ダメになったり、落ち込んだり
嬉しくなったり。
…だけどね、灯吾。
どんな着飾った言葉よりも
どんな素敵な愛の言葉よりも
何気ない瞬間
あなたがあたしを思い出してくれたら。
それだけで、あたしは十分幸せになれるんだよ。
悲しい時、辛い時。
思い出すのはやっぱり、灯吾しか居なくて。
灯吾だけが
あたしの全てだったから。
もし、灯吾が
悲しい時や辛い時、思い出す相手があたしであるならば。
あたしは、灯吾の傍に
―――居てもいいですか?
上着も持たず、タクシーに乗り込んだあたしは
迷うことなく運転手に病院名を告げた。
朝の街を抜け、タクシーはあっという間に灯吾の入院する病院へ辿り着く。
でももう、迷いはなかった。
タクシーから降り立つと、深呼吸を何度か繰り返す。
そして、一歩踏み出した時だった。
「……聖華?」