―White Memory―


行ったり来たり。

今のあたしは、すごく不安定で。


灯吾の言葉ひとつで
ダメになったり、落ち込んだり

嬉しくなったり。




…だけどね、灯吾。


どんな着飾った言葉よりも
どんな素敵な愛の言葉よりも

何気ない瞬間
あなたがあたしを思い出してくれたら。


それだけで、あたしは十分幸せになれるんだよ。



悲しい時、辛い時。

思い出すのはやっぱり、灯吾しか居なくて。


灯吾だけが
あたしの全てだったから。



もし、灯吾が
悲しい時や辛い時、思い出す相手があたしであるならば。


あたしは、灯吾の傍に

―――居てもいいですか?







上着も持たず、タクシーに乗り込んだあたしは

迷うことなく運転手に病院名を告げた。


朝の街を抜け、タクシーはあっという間に灯吾の入院する病院へ辿り着く。



でももう、迷いはなかった。


タクシーから降り立つと、深呼吸を何度か繰り返す。

そして、一歩踏み出した時だった。




「……聖華?」




< 40 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop