―White Memory―
振り返ると、久しぶりに見たその姿に、あたしの胸が嫌な音を立てる。
「…美貴、」
「久しぶり…、だね。」
あたしは何も言えなかった。
任せていいかな、そう言ったのはあたしなのに
やっぱり灯吾の傍に居たい、なんて。
…でも。
それでも、あたしは―――。
「ごめん、美貴…。」
「…え?」
「あたし、あたしやっぱり――。」
続きが言えなくて、唇を噛み締め俯く。
すると、カツンとパンプスが鳴って美貴があたしの手を掴んだ。
「…謝らないで。」
その言葉に、誘われるように顔を上げる。
美貴はとても優しい顔で笑っていた。
「…あたし、ずっと灯吾くんが好きだった。大学に入ってから、ずっと。」
そんなに前から……?
初めて聞く美貴の想いに、胸の奥が痛みを知らせる。
「でもね、あたし知ってたんだ。気が付いちゃったの。灯吾くんの視線が追い掛けてた人を。」
そして一呼吸置いて、美貴は言った。
「灯吾くんは、出会った時からずっと…ずっと、聖華を見てたから。」