君は君でしかない
2章
「ここは、何ていう惑星なの?」
僕は隣にいるママにたずねた。

「これはね、地球」
「…地球?」
「そう、わたしやエルフの星から4千万キロくらい離れているのよ」
「4千万キロ…?」

…って、どのくらいかな?

「近いけど、随分遠いってことよ」
うーん、と考え込む僕にママが言った。

そうか、随分遠いのか…。

それにしても…

吸い込まれそうだ。
「何て美しいんだろう…」
ドキドキ、した。
宝石みたいだ。

「何て、美しいんだろう…」



僕は、エルフ。
この星(地球って言ってたね)より、ちょっと小さい星に住んでる精霊なんだ。

「生き物は? 僕たちみたいなのが、住んでる?」
僕はわくわくして聞いた。
「そうね、いろーんな生き物が、いるんですって」
「えー、ママ、下に降りたいよ。行ってみてもいい? いいよね?」
「それはダメ」
ママがピシャリと言った。
「さ、もう帰りましょう」
続けて、言った。


僕たちは、自分の星を出て散歩してたんだ。
宇宙にはいっぱい、星があるんだね。

でも、僕の心をこんなにも惹きつけたのは、“地球”だけだよ―。



何だろう、
この星の美しさは。

何だろう、
この星の温かさは。



「ママ、また地球を見にきてもいい?」
「いいわよ。でもエルフ…」
「?」
「下に降りることは、絶対にダメよ」



どうしてなんだろう。
どうしてママは、そんなことを口にするんだろう…。

僕にはまだ、
それが分からなかった。
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