心の距離
鳴らない電話
以前よりも寂しく、虚し過ぎる生活にも慣れてきた頃。

街に桜の花が舞い散り、彼女をはじめて見た日から丸一年が過ぎていた。

彼女の居た騒がし過ぎるパチンコ店に通う事を辞め、全くと言って良い程、鳴る気配の無い携帯を静か過ぎる部屋で眺める日々。

せめて夢の中で会えたら…

毎日のように彼女の事を考えながら眠りにつくせいか、彼女が夢に出て来る事は無かった。

最初で最後の行動をしなければ、彼女からの電話を待つ事も無かったのに…

最初で最後の行動をしなければ、鳴らない電話に苛立つ事も無かったのに…

今更、後悔したって遅過ぎる。

いつの間にか、部屋に溜まっていったのど飴を口に放り込み、力無くベッドに凭れかかった。
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