心の距離
黙ったまま後片付けを始める彼女。

「何にも教えてくれないんだ…せめて、夢の話くらい教えて下さいよ。現実じゃ無いんだから…」

書類を社長の机に置いている彼女の背中に小さく告げると、彼女はうつむきながら、小さく呟くように答えた。

「…田辺さんが出てきました。たぶん、シャツをかけてくれたからでしょうね!…優しく包んでくれました」

徐々に赤くなっていく彼女の耳。

うつむく仕草が愛し過ぎて…

優しく彼女を背後から抱き締めた。

「…こう言う風に?」

自分とは思えない程、積極的な行動。

何度も夢の中で抱き締めた彼女の体が、今は現実に僕の腕の中にある…

腕に伝わる彼女の鼓動と、燃えるように熱い彼女の耳。

荒くなりそうな呼吸を抑えながら、彼女の耳元で小さく囁いた。

「…ことみ?夢の中でこうしてた?」

「や…急にどうしたんですか?つうか、お酒臭い…」

耳に少しだけ触れた唇に、敏感に反応する彼女。

小さく笑いながら彼女の耳元で小さく囁いた。

「正夢にしたくなった。細いから、もっと硬いかと思ってたけど、凄い柔らかいね。気持ち良いよ…」

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