心の距離
彼女に気持ちを伝えたら、どちらからが傷付くのは目に見えている。

『傷付くのも、傷付けるのも嫌?』

彼女の放った言葉が、頭の中に響き続けた。

これ以上近付け無い体の距離と、今以上近付け無い心の距離に、ため息ばかりがこぼれ落ちた。

これ以上ここに居たら、ますます彼女に魅かれてしまう…

ますます彼女に魅かれてしまったら…

…傷付くのも、傷付けるのも嫌だ…

頭の中に浮かんだ結論に、成す術も無いまま、彼女に小さく告げた。

「…帰るね」

「帰っちゃうの?」

「うん。ゆっくり寝てなね」

言葉の後に、手を強く握られ、頭の中がショートしそうになる…

「…帰っちゃヤダ」

「ごめんね。…これ以上ここに居れないよ」

「…もう少しだけ居て欲しい」

「ごめん。傷付けたく無いんだ」

「…もう傷付いてる。今以上傷付く事は無いよ」

彼女の言葉で、自分の中の何かが弾け飛んだ。

慌てて手を離し、膝を抱えて座る彼女。

「ご…ごめんね。迷惑だよね!私、同じ過ちを犯そうとしてる…」

「もう遅いよ」

彼女を強く抱き締め、唇を重ねた。

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