Hurly-Burly 【完】

男の子が一瞬お母さんと目を合わせた後、

駆け寄ってきた男の子に抱きつかれた。

「うおっ」

勢い良い子だな。

お姉ちゃん、ひっくり返りそうだったよ。

「お姉ちゃん、ありがとう。

僕、お姉ちゃんと居たから寂しくなかった。

お姉ちゃんが手を握ってくれたから

怖くなかったんだ。」

小さな口で一生懸命喋る男の子。

「うん、お姉ちゃんも君に会えて

良かったよ。」

実に充実した美術館見学になったよ。

「さっきね、お姉ちゃんがお母さんに

なって欲しくないって言ったのはね。」

男の子がウルウルした瞳であたしを見つめる。

「うん。」

「お姉ちゃんのこと好きになったから。」

いきなりの爆弾投下にギョッとした。

この子、今何と?

「僕、いつか迎えに行くからッ!!」

男の子がそう言った瞬間、

唇に柔らかな感触がして目を見開いた。

「まぁ」

お母さん、そんな息子の大胆な行動

にもっと驚こうよ。

みんなも何かツッコミ入れてよ。

「えっ!?」

唇を押さえて男の子を見ると、

真っ赤になった顔で笑った彼が、

「大好きだよ。」

そう告白された。

「うわっ、お、お姉さんも。」

パニックってドキドキの心臓を

鷲づかみされたような感覚のまま、

男の子を見る。

「お姉ちゃん、名前は?」

にっこり笑う男の子は可愛い男の子なんだけど、

「ひ、日和です。」

少し悪戯っ子のように笑うお顔がこれは

やんちゃな子になりそうだなと思った。
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