Hurly-Burly 【完】

その癖、何故か突き放せって言われると

途端に浮かび上がるんだ。

さっきの笑みを消すことが出来ない。

初めて見たあの笑みを忘れろなんて

今更出来そうにねぇよ。

「大事だってのは分かった。

だけど、俺だって委員長の力に

なりたいんだ。

口だけじゃねぇんだ。

俺、初めて笑った顔見た。

さっき初めて本当に笑ったところ見たんだ。

いつもの完璧に作った笑みなんて見てっから

あんな顔見たら後に引けねぇよ!!」

今まで黙ってたナルが暴走し出した。

馨の腕の中で暴れるナル。

いつもは僕とか言う癖に完璧に我を忘れてる。

あれはもう確実に気に入ってる。

ナルにしては珍しかった。

普段は中々女になんて興味持たねぇのに。

元々、ナルが負ぶって来た。

あの日、気絶したあの子を

負ぶって来たナルを見た時は正直驚いた。

慶詩も何だかんだ言ってた。

でも、分からなくはなかった。

負ぶって来たナルの背中を

中々離さなかったあの子を

気に入るのも仕方なかった。

そんな無防備の状態で受け入れるって

のをあの子はやってのけた。

口では嫌だと言っても無意識に

受け入れられると正直嬉しいものだろう。

普段から邪険に扱われる俺たちのような

端くれを意図も簡単に受け入れた。

だから、ナルは疲れてしまいそうな

ほど仕事をこなすあの子を心配してた。

変なこと言ってるのは確かに正直

引くところもある。

けど、やっぱり違うんだろうな。

あの子が本心で笑った顔に見惚れたのは

俺だけじゃなかったのね。
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