D i a r y


雨は、王子様はおれだと言った。

ならば、雨はバラなんだろうか。

ありふれたバラだ。同じような姿をした
バラなんて何千と存在する。

他の人間にとっては、ただの、

価値のない、バラだ。

でも

おれが、見つけた
おれが、愛した

たったひとつのバラだ。

生命よりも大切な、

なにより美しい
おれだけのバラだ。


そして、王子はバラを置いて
遠いところに行ってしまう。

きっと彼は、ひどく愚かだった。

ああ、もしかしたら

おれがバラで、

雨が王子なのかもしれない。

身勝手な態度に、

愛想をつかして
他のところに行って。


素直に側にいてほしいと
素直に言えなかったバラ。

幼すぎた王子、戻らない時間。


「私は、あなたを愛しているのです。

あなたがそれを、
ちっとも知らなかったのは、
私が悪かったんです。

でも、そんなこと、
どうでもいいことです。
私もそうでしたけど、
あなたもやっぱり、
おばかさんだったの。

おしあわせでね・・・・」


ばーか ばーか

愛してるよ


2007.2.2
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